「最初は、誰が脚本を書くのかも決まっていなかったんですが、『カメ止め』のヒットも手伝って、『上田くんが書いたほうが……』みたいな流れが生まれていたので(笑)。プロットの段階で二人の監督の意見も大いに取り入れながら、必死で脚本を書きました。今回のような無謀なプロジェクトの中で学んだのは、人を信じる力と、自分を疑う力、その両方の大切さです。監督は、決断する場面がすごく多いので、中泉監督と浅沼監督が、同じ立場で、忌憚なく意見を出してくれて、今度は、『なるほど』と膝を打つことの連続だったんです」

 映画「イソップの思うツボ」には、3組の家族が登場する。それぞれの監督が、一つずつ家族の物語を担当し、いくつものどんでん返しの末、家族の正体が明らかになっていく。

「『カメ止め』は、無名の監督が作った低予算映画で、最初は5千人の動員さえ無理だと言われていたのに、思いがけないどんでん返しがあった。今回も、無謀だと思われることに挑戦して、ワクワクできました(笑)」

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号