上田慎一郎(うえだ・しんいちろう)/1984年生まれ。中学生で自主映画を撮り始め、高校卒業後独学で映画を学ぶ。2009年、映画制作集団を結成。8本の映画を制作。松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト「スペシャルアクターズ」は10月に公開 (撮影/横関一浩)
上田慎一郎(うえだ・しんいちろう)/1984年生まれ。中学生で自主映画を撮り始め、高校卒業後独学で映画を学ぶ。2009年、映画制作集団を結成。8本の映画を制作。松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト「スペシャルアクターズ」は10月に公開 (撮影/横関一浩)

「絶対にうまくいかないと思う」

 3人の監督で一つの映画を作り上げる──。3年前、そんなプロジェクトが立ち上がったとき、プロデューサーと3人の監督を除く誰もが、「そんなの無理だ」と思ったという。

 4年前、上田慎一郎監督は「4/ ねこぶんのよん」という映画の一編で、商業映画デビューを果たした。“SKIPシティ”という埼玉県が中心となって推進する映像クリエーターの支援プロジェクトによって実現した映画は、若手映像作家4人が手がけた四つの短編で構成されていた。

「その作品が縁で、のちに『カメラを止めるな!』で助監督を務める中泉裕矢さんと、スチールを担当した浅沼直也さんと出会い、意気投合しました。そうして、新たにその支援プロジェクトに、『3人の監督で一本の長編映画を作る』という企画を提案し、見事採用となったのです。周りに話すと、『絶対無理』とか『ありえない』とか、そんな反応ばかりで、それがかえって僕のやる気に火をつけてくれましたね(笑)」

 いざ打ち合わせを始めてみると、侃々諤々の討論が繰り返され、なかなか話はまとまらなかった。それと並行して上田監督は、「カメラを止めるな!」の制作を開始。同作は、18年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭でゆうばりファンタランド大賞を受賞し、同年の公開後は、制作費約300万円のインディーズ映画ながら、動員220万人以上、興行収入31億円突破のヒットとなった。一躍時の人となった上田監督は、メディアにも引っ張りだこで、多忙な日々を過ごす。そんな中、3人の監督で作る映画の期限が迫ってきて、年内に撮影を終了しなければいけないことがわかった。3人はそれぞれに、「自分のやるべきことをやらなければ」と腹を括った。

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