「これがインテリの限界だとしたら…」大センセイ、連載を打ち止め (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「これがインテリの限界だとしたら…」大センセイ、連載を打ち止め

連載「大センセイの大魂嘆!」

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山田清機週刊朝日#山田清機
イラスト/阿部結

イラスト/阿部結

 SNSで「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれるノンフィクション作家・山田清機さんの『週刊朝日』連載、『大センセイの大魂嘆(だいこんたん)!』。今回のテーマは「トンコ」。

*  *  *
 その昔、新聞はインテリが作ってヤクザが売ると言われたものだが、現代の新聞販売拡張員はちょっと様子が違う。

 先日、街をぶらぶらしていると、道端で新聞販売店のジャンパーを着た三人組が何やら話し合っていた。

「僕、もう……」
「いいですか、誠意をもって玄関のベルを押せば……」
「でも、お前んとこの新聞なんかいらないって……」
「わかるけど、なんとかがんばっていきましょうよ」

 リーダーらしき男性がこう言うと、三人は円陣を組んで右手を重ね合い、「おう!」とひと声気合をかけて散っていった。それは、悲壮感あふれる姿だった。

 数日後、大センセイの家のドアフォンが鳴った。モニターの中に、見知らぬ中年男の顔があった。

「旦那、一年でいいからさ、新聞とってくれませんか」

 きっと引っ越してきたのをチェックしていたのだろう。いつもなら門前払いにするところだが、三人組の姿を目撃した直後である。

「新聞、読まないんで」
「いまなら、ビールをワンケースつけますから」

 カネコと名乗る赤ら顔の男とやり取りするうち、以前、ある販売拡張員に教わった言葉を思い出した。

 トンコ。

 仕事を放り出して逃げてしまうことを、トンコというそうだ。販売店は社員寮を用意したり、生活費の貸付をしたりと手を尽くしているが、トンコはなくならないと拡張員氏は言った。

「辛い仕事だからさ」

 カネコさんが、景品のリストを取り出した。

「発泡酒なら二ケースつけられるんだけど、旦那、ビールにしましょうよ。やっぱりね、本物じゃなくちゃいけませんよ」

 大センセイ、なぜかカネコさんの言葉にじーんときてしまった。本物なんて、久しぶりに聞く言葉だ。

「じゃあ、一年ね」
「旦那、本当にありがとう。ありがとうございます」


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