「命だけじゃありません。走る喜びを知り、オリンピックを目指そうと夢を持つことを知った子も生まれたんです」

 同プロジェクトではせっかくのマラソン大国ケニアに来たのだからと、マラソン大会(ハーフ、10km、キッズ部門)も開催してきた。子どもにとっては寄贈されたシューズを履いてのデビュー戦となるが、スラムから国の強化候補選手まで誕生した。

 まさに夢のような話である。

 何も資源をあてにして擦り寄り国益を得ることだけが外交ではない。一足のシューズが仲立ちする国際交流もある。アフリカの子どもにとってQちゃんは、靴下の中にプレゼントを入れてくれるのではなく、靴を履かせて未知の世界に飛び立たせてくれるサンタクロースである。(取材/文・黒井克行)

週刊朝日  2019年8月9日号