飯塚市の再開発ビル (c)朝日新聞社
飯塚市の再開発ビル (c)朝日新聞社

 総務省の人口動態調査によると、日本の人口減少幅が43万人と過去最大で10年連続の減少となった。当然、人口減少が進めば経営が成り立たない病院介護施設、商業施設が出るといった弊害が出てくる。その解決策とは。

 人口減少によるサービス施設の撤退などにはどういう対応策があるのか。

 一つの例として、「コンパクトシティ」が挙げられている。各種のサービスを提供する行政、医療、福祉、商業を街の中心に集約し、都市機能を維持する施策だ。国交省では、その「シティ」同士を結びつけることで、活性化につなげようとする「コンパクト・プラス・ネットワーク」を掲げている。

 医療関係者からも、「街をどうつくるか、という観点から病院を再編するべきだ」といった考えが出てきている。

「街づくりは病院づくりだ」という日本病院会の相澤孝夫会長は、人口が確実に減っていく中で医療の質を保つためには、一定の地域ごとで整理・再編し、現在8千ある病院を4千まで減らす必要があると主張する。

「これまでどおりの病院を維持するのはもう不可能です。病院がなくなる地域では病院と地域をネットワークでつなぎ、遠隔医療を導入したり、交通手段を整えたりするなどの対策を講じる。多少の不便を受け入れて、街をどうするかという大きな視点から病院のあり方を考えていく必要があります」(相澤会長)

 介護の観点からも「ケア・コンパクトシティ」という考え方も出てきており、解決策の一つとして期待されている。

 自治体からは「住み慣れた土地から住民を移動させるのは難しい」との声が多く上がっており、進めるのは簡単ではなさそうだが、すでに取り組みが始まっている地域もある。飯塚市(福岡県)では10年に「都市計画マスタープラン」を策定し、居住誘導区域や都市機能誘導区域を設定し、都市機能の維持を目指している。

 同市の人口は00年に約13万6千人だったが、現在は約12万8千人。40年には10万7千人にまで減少すると予測されている。百貨店の「ダイマル商店」と「井筒屋」があったが、ダイマル商店は1999年に破産、井筒屋も昨年10月に撤退した。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ