同会専属の獣医師、丸子理恵さんは「餌として売られる鹿せんべいを見て、スナック菓子なら構わないと思うのは間違い。鹿せんべいは米ぬかなどで作られ、巻いた紙も無害です。鹿は草を食べて微生物の活動でエネルギーを出しますが、スナック菓子ではそうしたバランスが失われてしまう」と説明する。さらに「プラごみなどはレントゲン写真も草などと同じに映り判別できない。仮にプラごみの存在がわかっても細菌感染で死ぬ危険も高く、手術も難しい」と話す。

 蘆村氏は「紙は鹿にあげてもいいと先生が言っていた、という小学生がいたが、今はコーティングなどで純粋の紙はほとんどない。困ったものです」と啓発の重要性を説く。とはいえ平日の観光客は中国人や欧米人など外国人ばかり。「英語や中国語などの啓発看板も増やしたいが景観面もありむやみに立てられない。今のところ、ごみ箱は置く予定はない」(県・奈良公園室の北脇宏章課長補佐)という。

 7月中旬、今年生まれた子鹿が放たれた。「可愛い子鹿が近寄っても鹿せんべい以外の餌をやらないで」と蘆村氏。愛護会は大掃除をし、周囲の店舗はレジ袋を控えてエコバッグも発売したが、マナーに頼るしかないのが現状だ。(粟野仁雄)

週刊朝日  2019年8月9日号