観光客に人気の奈良公園の鹿 (撮影・粟野仁雄)
観光客に人気の奈良公園の鹿 (撮影・粟野仁雄)
衰弱死した鹿の胃袋から取り出されたプラごみ (撮影・粟野仁雄)
衰弱死した鹿の胃袋から取り出されたプラごみ (撮影・粟野仁雄)

 国の天然記念物に指定されている奈良公園の鹿が観光客の持ち込むレジ袋などを胃に詰めて衰弱死するケースが相次いでいるが、対策は容易ではない。

【写真】衰弱死した鹿の胃袋から取り出されたプラごみ

 一般財団法人「奈良の鹿愛護会」の蘆村好高事務局長によると、今年3月、「南大門(東大寺)で鹿が倒れている」と連絡があり保護したが死んだ。解剖すると3.2キロのプラスチックごみが胃から出た。牛と同じ反芻(はんすう)動物の鹿は四つの胃がある。小さなごみなら口から吐き出すが、最初の胃に大きなごみが詰まると便で出せない。餌が胃に入らず衰弱死する。3月から6月までに解剖した14頭中、9頭からプラごみが大量に出て、4キロを超えるものもあった。多くはレジ袋や菓子の包みだ。

「被害は以前もあったが、最近の奈良は暑い真夏でも外国人観光客が多い。ちょうどプラスチックごみの海洋汚染が問題化され、奈良の鹿の被害は海外でも大きく取り上げられました」と蘆村氏。

 奈良公園では1980年代、鹿に荒らされたり家庭ごみが持ち込まれたりしたことを受けて、ごみ箱は完全撤去された。持ち帰りが原則だが捨てる客も多い。鹿は嗅覚(きゅうかく)が鋭く匂いがついていると食べ物と思い、観光客から袋を引っ張って食べることもしばしば。

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