普茶料理 梵/「普茶料理」とは、江戸時代に中国の隠元禅師が京都・宇治の黄檗山萬福寺に伝えた、卓上で食す中国風の精進料理。同店では動物性の素材を一切排し、野菜や豆腐を使って季節の風情を楽しませる。(撮影/写真部・加藤夏子)
普茶料理 梵/「普茶料理」とは、江戸時代に中国の隠元禅師が京都・宇治の黄檗山萬福寺に伝えた、卓上で食す中国風の精進料理。同店では動物性の素材を一切排し、野菜や豆腐を使って季節の風情を楽しませる。(撮影/写真部・加藤夏子)
鰻豆腐
<br />「「普茶コース」(6000円~)の夏の一品「鰻豆腐」は、鰻の蒲焼きに似せた〝擬製料理〟。豆腐に山芋やゴボウを合わせ、海苔の上に塗って揚げ、天火で焼いた。鰻の小骨の触感も見事に表し驚かされる。「普茶弁当」(3450円、月~土の昼のみ)でも「鰻豆腐」を通年提供。全室、椅子式個室。税別/【普茶料理 梵】東京都台東区竜泉1-2-11(営)月~土12:00~13:30L.O. 17:30~19:00L.O. 日12:00~18:00L.O.(休)水
鰻豆腐

「「普茶コース」(6000円~)の夏の一品「鰻豆腐」は、鰻の蒲焼きに似せた〝擬製料理〟。豆腐に山芋やゴボウを合わせ、海苔の上に塗って揚げ、天火で焼いた。鰻の小骨の触感も見事に表し驚かされる。「普茶弁当」(3450円、月~土の昼のみ)でも「鰻豆腐」を通年提供。全室、椅子式個室。税別/【普茶料理 梵】東京都台東区竜泉1-2-11(営)月~土12:00~13:30L.O. 17:30~19:00L.O. 日12:00~18:00L.O.(休)水

【写真】「鰻豆腐」はこちら

 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、作家、国文学者・林望さんの「普茶料理 梵」の「鰻豆腐」だ。

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 こちらは、中国風の精進料理“普茶料理”のお店。もうかれこれ40年近く通っているでしょうか。近くにある東京藝術大学の助教授を務めた頃は、ちょくちょく出かけては、舌鼓を打っておりました。

 普茶コースは品数が多いのですが、一品一品、手が込んだ仕事をされているお料理ばかり。いつ行っても感嘆させられますね。そんななか、夏のお楽しみといえば「鰻豆腐」。豆腐や山芋を使い、鰻の蒲焼きに見立てた料理です。ご主人が「ちょっとこんないたずらをしまして……」と、さりげなくお出しになる。なんともこれが心憎い。また豆腐を加工した「義生豆腐」は通年出されますが、何度食べても飽きません。どれもご主人のお人柄を表すように身体に優しく、それでいて非常に満足感もある。知人をお連れしたら皆さんに喜んでいただけます。

 お店は手入れが行き届いた純和風の素晴らしいたたずまいですが、決して堅苦しくなく、くつろげる。そんなお店についまた足が向いてしまいます。

(取材・文/沖村かなみ)

「普茶料理 梵」東京都台東区竜泉1-2-11/営業時間:月~土12:00~13:30L.O.、17:30~19:00L.O.、日12:00~18:00L.O./定休日:水曜

週刊朝日  2019年8月2日号