「「普茶コース」(6000円~)の夏の一品「鰻豆腐」は、鰻の蒲焼きに似せた〝擬製料理〟。豆腐に山芋やゴボウを合わせ、海苔の上に塗って揚げ、天火で焼いた。鰻の小骨の触感も見事に表し驚かされる。「普茶弁当」(3450円、月~土の昼のみ)でも「鰻豆腐」を通年提供。全室、椅子式個室。税別/【普茶料理 梵】東京都台東区竜泉1-2-11(営)月~土12:00~13:30L.O. 17:30~19:00L.O. 日12:00~18:00L.O.(休)水
著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、作家、国文学者・林望さんの「普茶料理 梵」の「鰻豆腐」だ。
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こちらは、中国風の精進料理“普茶料理”のお店。もうかれこれ40年近く通っているでしょうか。近くにある東京藝術大学の助教授を務めた頃は、ちょくちょく出かけては、舌鼓を打っておりました。
普茶コースは品数が多いのですが、一品一品、手が込んだ仕事をされているお料理ばかり。いつ行っても感嘆させられますね。そんななか、夏のお楽しみといえば「鰻豆腐」。豆腐や山芋を使い、鰻の蒲焼きに見立てた料理です。ご主人が「ちょっとこんないたずらをしまして……」と、さりげなくお出しになる。なんともこれが心憎い。また豆腐を加工した「義生豆腐」は通年出されますが、何度食べても飽きません。どれもご主人のお人柄を表すように身体に優しく、それでいて非常に満足感もある。知人をお連れしたら皆さんに喜んでいただけます。
お店は手入れが行き届いた純和風の素晴らしいたたずまいですが、決して堅苦しくなく、くつろげる。そんなお店についまた足が向いてしまいます。
(取材・文/沖村かなみ)
「普茶料理 梵」東京都台東区竜泉1-2-11/営業時間:月~土12:00~13:30L.O.、17:30~19:00L.O.、日12:00~18:00L.O./定休日:水曜
※週刊朝日 2019年8月2日号