徳仁皇太子は、現地の人びとの食事や生活にも関心を持っている。世界中どこの、どんな料理もおいしく感じるのだといい、

「現地に行くと、食事が本当においしいですね」

 と海外への訪問を楽しみにしていたという。

 現地では早朝の街をジョギングすることもあった。土地の空気を肌で感じる機会だったのかもしれない。

 そして東宮御所では、週に2、3回、赤坂御用地の内側をジョギングで回り、汗を流す。小高い丘もあり、起伏に富んだ広大な御用地は、最適のコースだ。緑豊かな敷地でのジョギングは、四季を感じるひとときでもある。

「紅葉が、きれいなんですよ」

 徳仁皇太子のジョギングのペースはかなり速かったようだ。平素から身体を鍛えている皇宮警察の護衛官でも、並走は容易でない。遅れないよう、何キロ走ったか計測できるタイプのスニーカーを履いて、備えるのだという。

 徳仁皇太子は、ジョギングの魅力について大場さんにこんな話をしている。

「ランナーズハイというのでしょうか。少し走ると息が切れて、非常に苦しいときがあるのです。しかし、それを我慢して、ゼイゼイ、ハーハー、と走っていると、ふと、とても気持ちよくなる瞬間が来るのです。あれは、何なんでしょうねえ、不思議です。でも、だから、やめられないのです」

「おもしろいですね」「何なんでしょうね」というのが、何度となく徳仁皇太子の口から出てきたフレーズだ。

「公私をはっきりと区別なさっている印象です。プライベートでは、やわらかですが率直にお話しになる。素のご自身の言葉なのでしょう。厳格さもお持ちですが、ときにはユーモアを交えながら、相手を畏怖させない気遣いを感じます」(大場さん)

 一昨年に、マレーシアの首相や、欧州訪問での一般市民とのセルフィー(自撮り撮影)の写真がSNSにアップされて話題になった。新天皇との親しい距離感が生まれつつある。

 垣根のない対話と交流。それが、令和の新天皇の横顔なのだろう。(本誌・永井貴子)

※週刊朝日2019年8月2日号