今国会では、重要法案と位置付ける子ども・子育て支援法改正案成立の一方で、丸山穂高議員のトンデモ発言、老後2000万円問題といった事件もあった。本誌でおなじみの2人の論客、御厨貴・東大名誉教授(政治学)と松原隆一郎・放送大学教授(社会経済学)が与野党の国会論戦、参院選をぶった斬る。
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松原:年金だけでは老後、2千万円不足という話自体は、最近では週刊誌がどこも似たような特集を組んでいるので、国民はみんな知っているでしょ。本気で国会論戦したら、非常におもしろいテーマだったのに。
御厨:野党がそこに論戦を持っていかなかったところが、やっぱりやる気がない。そして、やらなくてもいい党首討論をやった。党首討論にこだわったのは野党のほうで、参院選前にテレビで放送され、自分たちの姿がメディアに出るからという理由もせこい……。
松原:憲法改正案とかは、いちおう旧民主党も出したし、公明党も出したりしているわけですけど、年金について自民以外はぜんぜんやってこなかったイメージが強い。野党の間で意見が割れたり、揚げ足取りしている場合じゃない。
御厨:理念というほどの理念が既にないんじゃないですか。
松原:立憲の枝野(幸男)さんの国会論戦を聞いても主張したいことが特にあるわけでもない。ただ、野党第1党の座には、こだわっているように見えます。
御厨:枝野さんが一番、排除の論理が働いている。国民民主党をいかにたたくか、そういうときだけギーギー言う内ゲバ体質のように見えます。彼が一番恐れているのは立憲が野党第1党の座を滑り落ちること。国会のしきたりから言うと、いちおう与党の総裁と野党第1党の代表というのは対等に扱われるから、気分が悪くないはずです。
松原:与党になろうと思わず、野党第1党が居心地がいいんですね。
御厨:安倍さんがしょっちゅう、海外へ行って、国賓としてプロトコルで優遇されてるでしょう。そういう待遇が好きだというのと似たようなもんでね。野党第1党のポジションというのは枝野さんにとっては絶対譲れない。