どこぞの国の総理大臣が「令和」は万葉集に由来するので初めて日本の古典に基づく元号だと言ったらしいが、そもそもその万葉集の原典は、岩波書店が出版した『新日本古典文学大系』の『萬葉集一』の注釈によれば、中国南北朝の詩文集『文選』に含まれた後漢の人、張衡の詩が本来の出典なので、中国、つまり外国の古典に由来しているんだぜ、おい、安倍君。

 なぜこんな当たり前の史実を、日本のテレビ・新聞お抱えの知識人が指摘しないのかねえ。

 こういう正論を言う私に対して、韓国人はこう言うのです。「広瀬さんは、日本では過激な人間だと思われているようだけど、全然過激じゃない。韓国の人はあなたよりずっと感情が強いですよ」って。

 その通り、非常にはっきり意志を表明する韓国人に比べれば、ここに記述していることなどは、ごく穏当な見解にすぎないので、テレビ報道界は激昂(げっこう)せず、冷静に自分の行為を観察したほうが賢明である。

 さて、日本人に強制連行されて働かされた朝鮮人(現在の韓国人)に対して、韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じたことにかこつけて、日本のテレビ報道界が、「日韓国交正常化の時に、日本は韓国に金を払ったではないか」というトーンで一斉に韓国政府の文在寅政権を批判し始めたのはなぜか、という理由を知らない人もいるので、説明しておく。

 戦後におこなわれた日韓国交正常化という外交事業は、1965年6月22日に日韓請求権協定が締結されて、日本は韓国に経済協力資金を支払いながら、35年の長きにわたって朝鮮を植民地支配したことを罪と認めなかった。その間、日本は、70万人以上という朝鮮人を主に農村地帯で強制的に拉致(らち)して、炭鉱や金属鉱山での採掘、道路やトンネル建設の土建業、鉄鋼業などの重労働に駆り出しておきながら、今日現在まで、大被害に遭って人生をめちゃくちゃにされた朝鮮人労働者個人に対して、まったく賠償してこなかった。

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韓国大法院判決の賠償命令は当たり前