「照れくさいかもしれないですが、『自分はもう年老いたので、今後のことを君たちに伝えておかないといけない。忙しいところ悪いけれども、法要や正月、お盆休みのときに、兄弟姉妹で日程を合わせて来てもらえないだろうか』というように、子どもにアプローチしてみましょう」(同)

 しかし、長年、疎遠になっているケースでは、会ったり、電話をしたりしてそれを伝えることさえ難しい。その場合、伝える手段として有効なのは手紙。電話よりも心に響くそうだ。

 文面のポイントは、子どもへの謝罪と感謝の気持ちを伝えること。親子で心理的距離があるなら、口語より丁寧語が望ましい。

「子どもに対して、いかに至らない親であったかをわびることです。その上で、生まれてきてくれたことでいかに有意義な日々を過ごせたかを伝えましょう。それから、死ぬ前に逝き方や相続などについて望むことや頼みたいこと、その費用の工面についてもきちんと伝えておきたいと表しましょう」(同)

 手紙を何度か出してみて、それでも返事がなかったら、第三者から内容証明郵便を送ってもらうのも一つの方法だ。内容証明は、いつ、どんな内容の文書を誰から誰あてに出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度。「いつまでに返事をください」と書いておくと返答率が高くなる。差出人が法律事務所となると受取人の心理的抵抗が大きくなるので、弁護士よりも社会福祉士がベターだろう。

 もしくは、信頼のおける第三者に直接届けてもらう。第三者に渡されたら失礼な態度は取らないと思われるからだ。山崎さんの経験上、これで8割くらいの人は、コンタクトが取れるようになるという。

「長年拒まれて突破口が見えないようであれば、会うことの経済的なメリットと、会わないことのデメリットを伝えてみましょう。メリット・デメリットがないと人は動かないものです。例えば、親が財産を持っていれば、相続で現金が手に入ること。デメリットは、借金返済という負の相続が来てしまうことなど。財産についてが、一番響きます。人は受け取る権利のあるお金ならほしいし、無用なお金は払いたくないものです」

 疎遠になっても、親子の縁はなかなか切り離せないのも事実。本気で関係修復をしたいなら、今すぐ、最初の一歩を踏み出してみませんか。

(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2019年7月26日号より抜粋