「孫をつれて実家に遊びにくると、軍隊アリみたいに、乾物・缶詰、肉などをごっそり持って帰っちゃう」

 とユキさん。頼られているうちが花だと思いつつ、次女から電話がかかってくるとドキッとするという。

 サチコさんやユキさんのケースのように、成人してからもずるずると親に生活を頼る子どもは珍しくない。親世代よりも、就労環境が厳しいという社会情勢も背景にあるようだ。また逆に、子どもが親に金銭的な援助を続けることで関係性が微妙になることも。息子の妻が「お義母さんへの仕送りで、子どもの将来が狭まっている」と気分を害し、孫に会わせてもらえなくなったという女性もいた。

「金銭的に援助していても幸せならばいいですが、無理をしているのならば、問題。親子で忖度し合わず、理想のゴールを紙に書いてお互いに話し合うことです」

 シニア世代の親との付き合い方に関する著書が多数ある医師の平松類さんは、こうアドバイスする。お金のことは相手に面と向かって言いにくく、親子でも「なんとなく」「なあなあ」になりがち。親も子も「察してほしい」とばかりに、決断を相手に委ねるようなコミュニケーションをしているために、どちらかが不満をためて関係が悪化するケースが見受けられるという。

 親子で話し合う際のポイントは、精神面と物質面を別々に考えること。

「精神的には子どものことを大切に思っていて、幸せになってほしいと伝えることです。それから物質面には限界があることを言わなければ伝わりません。子は親には余裕があると勘違いします」(平松さん)

 例えば、「現在の親世帯の収入は○円。その10%の○円までは援助できる。それ以上は生活が苦しい」など。死ぬまでに解決したい問題であれば、きちんと自分の意見を子どもや親に伝えることが大切だという。

「『察してほしい』コミュニケーションのままでは、解決策も着地点も見つかりにくくなり、結局双方が忖度し合って、どちらかが不利なまま過ごすようになりますよ」(同)

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