「介護離職ゼロ」などについて話し合った2015年11月の1億総活躍国民会議。左から2人目が安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
「介護離職ゼロ」などについて話し合った2015年11月の1億総活躍国民会議。左から2人目が安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
要介護(要支援)度の認定の目安と介護サービス利用金額 (週刊朝日2019年7月26日号より)
要介護(要支援)度の認定の目安と介護サービス利用金額 (週刊朝日2019年7月26日号より)

 親や配偶者の介護は突然やってくる。2025年は、1947年から49年生まれのいわゆる「団塊の世代」が75歳の後期高齢者になる大介護時代に突入する。75歳を過ぎると要支援や要介護になる比率が高くなり、介護はひとごとではない。突然の介護にどう備えるかを知っておく必要がある。

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「介護はひとりで抱え込まない。家族で抱え込まない。できるだけ介護のプロに任せ、チームで乗り越えていくことが大切だ」

 介護支援専門員・主任介護支援専門員として1千人超の高齢者のケアプランを作成した経験を持ち、現在は介護講師として活躍しているパソナライフケアの継枝綾子さんは話す。

 00年に介護保険制度が始まってからは、介護を支援する機能を家族から社会全体で支えていく外部的なシステムに移行する時代になったが、実際に介護の備えをしている人は少ない。しかし、平均介護期間は4~5年で、両親2人の介護が重なって10年以上となるケースもある。介護する側の高齢化も進み、「共倒れ」リスクが高まってしまう。

 継枝さんは「介護保険制度がスタートして19年になるが、介護に直面するのは突然で、誰もが介護の初心者。しかし、介護はしっかりと事前の準備をしていないとうまくいかないことが多い」と話す。

 継枝さんは、自分の講演会場で知り合った男性から聞いた話が忘れられない。

 その50代のスーツ姿の男性の表情は疲れ切っていた。10年以上前、商社マンとして海外赴任していたが、母親が倒れて寝たきりになった連絡を受けて帰国した。「今の自分があるのは母親のおかげだ」という思いが強く、自分の手で介護するために会社を辞める決断をした。6年間母親の介護をした後、父親も倒れてダブル介護に突入した。両親とも他界したが、男性に残されたのは、底をついた貯金と10年以上の仕事のブランクしかなかった。

 継枝さんは振り返る。

「仕事に対しても一生懸命に取り組み、世話になった両親の介護にも正面から向き合う誠実な人が、疲れ切った表情でいる姿を見ると胸が痛かった」

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