(c)2018MoozFilms/(c)Fares Sokhon
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 苛烈な中東の貧困と移民の問題に果敢に挑んだ監督は、レバノン生まれのラバキー。彼女自身が実際に貧困地帯などをリサーチして脚本に盛り込んだという。出演者は主役ゼインを含め、ほとんどが映画初出演の素人。7月20日からシネスイッチ銀座ほか全国公開。

【「存在のない子供たち」のワンシーンはこちら】

 わずか12歳で両親を訴えたゼイン。裁判長から「何の罪で?」と聞かれた彼は、こう答える。「僕を産んだこと」

 中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らず、法的には社会に存在すらしていない。学校に通うこともなく、路上でモノを売るなど、朝から晩まで両親に働かされている。だが、唯一の支えだった大切な妹のサハルが11歳で強制結婚させられてしまい、絶望したゼインは家を出てしまう。

 当てもなくバスに乗ったゼインだったが、誰も子供など相手にしない。あることからレストランで働くラヒルの赤ん坊ヨナスの子守をすることになるが、彼を待っていたのはさらに過酷な現実だった。

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
女性監督が誠実な目で見て差し出す中東の難民・移民問題、貧困、出生証明を持たない子供たちの痛み。乳歯がないから12歳くらいか、と推定される美少年を主人公に、彼が抱く、親を告訴するほどの怒りは見ていて納得がいく。

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