しかし、安倍総理の演説を聞いて驚いた。「民主党政権の下、遅々として復興は進まなかった。私たちは野党である悔しさ、申し訳なさで胸が震える想いだった」と、原発事故を野党攻撃に使ったのだ。私は、「この人は本当に危ない」と思った。自分の過ちに思い至ることができない。つまり、全く反省できない人なのだ。

 本コラム執筆中(10日)に恐ろしいニュースが入ってきた。米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が、イラン沖などの民間船舶護衛のため、有志連合の結成をめざし、数週間以内に参加国を募るというのだ。

 安倍総理は太平洋戦争の過ちを認めようとしない。イラク戦争の過ちについても、世界の先進国で日本だけは認めていない。

 米国は日本タンカーへの攻撃はイランの仕業だと断定するが、そんな証拠はない。しかし、過去の反省ができない安倍総理なら、躊躇なくトランプ大統領の言いなりで有志連合に何らかの形で協力するのだろう。「数週間後」なら、選挙後だ。安倍総理は通商交渉の結論を選挙後に延ばしてもらってトランプ氏に大きな借りを作った。

 選挙後の「ツケ返し」は日本にとって、思いもよらない致命的なものになるのかもしれない。

週刊朝日  2019年7月26日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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