12年には、文化庁の新進芸術家海外研修制度を利用し、約1年間、ニューヨークに留学する。

「留学中は、いくつも壁にぶつかって、しょっちゅう泣いていました。才能も実力も努力もすごい人たちを目の当たりにして、打ちのめされることも多かった。でも同時に、テクニックだけでは、人の心を揺さぶることができないことも学びました。“もっと芝居や歌がうまくなりたい”という思い以上に、大竹さんのように、人の心に残る芝居がしたいと考えるようになった。ニューヨークで得た一番のことは、精神を強く保つ秘訣だったかもしれないです」

 9月開幕のA New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」は、ブロードウェーの新進気鋭ソングライティングコンビと日本のクリエーティブ・チームがタッグを組む。

「芸術の世界は、制限をかけたらおしまいだと思うんです。日本から新しいミュージカルが生まれていく、その現場に立ち会えることは幸せ。私は、自分の努力や悪あがきを人にお見せすることを恥ずかしいと思わないタイプなので(笑)、なりふり構わず食らいついていきたいです」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2019年7月19日号