――自分の名前でお客さんを集めて、ショーをしたい。品川にあるホテルのラウンジが夜景が見えて素敵だった。ここでやろう、と思いついた。

 当然のように「手品なんてダメダメ」と。歌手のディナーショーをやるような場所ですからね。「ノーギャラでいいから」と粘って、試しにやらせてもらったんです。

 舞台に出ていったら、お客さんは全員後ろを向いていた。みんな夜景を見てるんです(笑)。仕方がないので「目の前でマジックが見たい方は、テーブルまで行きますので声をかけてください」と引っ込んだ。そうしたら「見たい」という方が出てきたんです。

 お客さんの目の前で、お客さんの時計を借りて「針がグルグル動きますよ」とやったら、お客さんが「きゃあ!」と驚く。悲鳴が上がると、ほかの人が「なんだろう」と自分のテーブルに呼んでくれる。デパートで毎日立ちっぱなしで実演販売をしていたから、数十組のテーブルをまわってマジックを見せることもまったく苦じゃなかった。

――評判を呼び、ホテルチェーンとの出演契約も決まった。そこに噂を聞いた「11PM」のプロデューサーと構成作家がやってきた。

「これ、マジックだと言わずに黙ってやってたら、超能力に見えませんか?」と、そのプロデューサーが言ったんです。転機でした。流行していた「超」という言葉と「魔術」を合わせた「超魔術」が誕生した。「ハンドパワー」もお客さんから言われた言葉がきっかけなんです。

「不思議ですね、なにか手から出てるんじゃないですか、ハンドパワーですね」と。

――1988年、「11PM」に登場すると電話が鳴りやまないほどの大反響。89年から「木曜スペシャル」が放送され、一躍時の人になった。サングラスをかけ、さっそうと登場し、「きてます!」が流行語にもなる。だが、逆風も吹きだす。

 自分では「超能力」なんて一言も言ってない。でもあのころは「超能力だ」と信じられて、大騒ぎになった。インチキだ、とバッシングを受けました。

 海外の人はマジックを一種のジョークだととらえています。でも日本人に、例えばロープを渡すと、ものすごく調べる。「騙されないぞ」と真面目に思うんですよね。で、不思議なことをすると、また疑う。

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