室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、日米安保条約に関するトランプ氏の発言について、ベールに包まれた日本側の対応を推測する。

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 これがほんとうだったら安倍政権は我々国民に大事なことを隠していたことにならないか。6月29日付の朝日新聞DIGITAL「安保不公平、トランプ氏『首相に伝えた』日本側は否定」という記事。

「トランプ米大統領は29日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)閉幕後に大阪市内で記者会見を開き、日米安全保障条約について『不公平な条約だ』と不満を表明した。また、安倍晋三首相に対し、条約の『片務性』を『我々は変える必要がある』と伝えたことを明らかにした。(中略)トランプ氏は会見で、『不公平な条約だと、過去6カ月間、安倍首相に伝えてきた』『我々は変える必要があると安倍首相に伝えた』と強調。ただし、条約から撤退する意思があるかを問われると、『全く考えていない』と否定した」

 つまり、トランプさんは半年も前から日米安保条約にイチャモンをつけ、変えろと安倍さんにいってきた。でも、そのことを国民はまったく知らされてなかったわけよ。

 知らされてきたことは真逆。5月のトランプ氏来日時に、安倍さんは「ドナルドとの非常に親密な個人的信頼関係により、日米同盟のきずなはもはや揺るぎようのない、世界で最も緊密な同盟となりました」とまでいってたしな。

 6月28日の日米首脳会談後、西村官房副長官が、日米安保についての議論は一切なかった、と火消しに走った。その言葉が一斉にニュースになったりした。ニュースにさせたかったんでしょ。

 安倍政権側はトランプさんの日米安保見直し発言をなかったことにしたかった。そして、イチャモンをつけてきたトランプさんは結局、条約から撤退することは「ない」と最後は答えた。普通に考えて、この国は、トランプさんが満足するような何かほかのものを差し出したのではないか?

 トランプ大統領は、米国の農産品や武器をもっとこの国に買ってもらいたい。そして、日系自動車メーカーの対米投資を増やしてもらいたい。まさかこの国は、トランプさんの日米安保の見直し発言で脅され、それをすべてのんだんじゃないだろうね。

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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