ムチンはアルコールから胃の粘膜を保護すると同時にアルコールの吸収をゆっくりにして、肝臓のアルコール分解の負担を軽くしてくれるのだ。
「このようにごまと納豆には、肝臓をいたわる成分がいっぱいです。私は今年で80歳になりますが、いまでも現役の医師として毎日100人近い患者さんを診ています。肝臓をこわさず、いままで元気に働いてこられたのは、私の場合『黒ごま納豆』のおかげと言っても過言ではないかもしれません。医者が具合悪くちゃ、困っちゃうからね(笑)」
最後に、疲れ気味の肝臓を回復させる方法についてもレクチャーしてもらった。
「一番いいのは、食後30分ごろ寝することです。肝臓は血液を大量に必要とする臓器です。だから横になって頭と足をちょっと上げて、肝臓に流れる血液の量を増やすようにするのです」
小腸で吸収された栄養素は、門脈という血管を通り肝臓に送り込まれる。この門脈は静脈なので、動脈よりもはるかに血圧が低い。その低い血圧で大量の血液を肝臓の下部から肝臓に送り込まないといけないのだから、なるべく横になり、血液が小腸から肝臓に向かって流れやすいようにしたほうがいいのだ。
「肝臓に流れる血液の量は、横になったときを100%とすると、その姿勢から立ち上がっただけで70%に減少してしまいます。そして歩いたり、立った姿勢で運動を行うと50%にまで減ってしまうことが知られています」
特に食事のあとは、胃腸の消化作用に血液が回されて肝臓の血液が減ってしまう。そこでごろ寝することで、そのマイナス分を取り戻すことが必要なのだ。
「休日のみでもOKです。仰向けになって寝てください。そのときクッションや枕で頭は少し上げること。これは逆流性食道炎の予防になります。また足の下にもクッションや座布団を敷いて、足を上げること。横から見るとちょうど肝臓が“船底”になっているような形で寝るのがベストです」
肝臓を守るために必要なのは多くの知識。あとは実践にうつすだけなのだ。
※週刊朝日 2019年7月12日号より抜粋