株でもうければもうけるほど、20・315%の税率が適用される所得が増えるので、所得全体に対する平均税率はどんどん下がる。格差是正どころか、格差拡大を助長する「とんでもない」制度だ。

 しかし、一度こういう仕組みを作ると、大金持ち(金融資産をたくさん持っている人)は、この制度の廃止に大反対する。彼らは、自民党の支持層だから自民党も、廃止には大反対となる。しかも、この制度を廃止すると、株価が下がる。それは、アベノミクスの生命線を揺るがすことになるから、この問題はタブーにさえなってしまうのだ。

 冒頭に紹介したとおり、アメリカでさえ、富裕層への資産課税強化が議論されている。日本は、そこまでは行きつかないだろうが、少なくとも、最もわかりやすい、金融所得の分離課税廃止くらいは、早期に実現すべきだ。

 参議院選挙の争点になることを期待したい。

週刊朝日  2019年7月12日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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