広報の大沼優子さんによると、同社は有給休暇取得日本一に向けて取り組んでおり、昨年度は「有休取得率」が84.8%、「平均有給休暇取得日数」は19日で国内企業トップ30位以内の水準だ。10年前には月間の残業が100時間を超える社員もいる“ブラック”な風土があったが、現在は平均すると月に9時間。有休を取りやすい制度にしてからのほうが業績も右肩上がりに伸びているという。

「例えば、『オリンピック休暇』。バンクーバー冬季五輪の頃から始まったのですが、どうしても見たい試合は朝まで会社のテレビで観戦する。そして放送が終わった日に1日休むんです。また、ママ社員同士で話し合って、休日には混雑して入れない人気の店に平日休みを取ってママ友会をするとか、自社で出している位置情報ゲーム『駅メモ!』のイベントに同僚と一緒に参加するなど。私自身も突然思い立って京都のイベントに参加するため、弾丸ツアーを決行したことがあります」(大沼さん)

 大沼さんによると、具体的な休暇名をつけることがコミュニケーションに結びつく効果があるという。ボランティア休暇を申請した社員がいたら、同僚たちが「ボランティアって何をするの?」という具合に会話が進み、社内の風通しがよくなったという。

 また、ブライダル事業を展開しているノバレーゼではかつて「アイデア休暇」制度を実施していた。これは、「大リーグからオファーが来た」「チョモランマにチャレンジしたい」など、嘘でもいいからユニークな口実を申請すれば休みが取れるという奇抜な休暇制度。スタートさせてはみたものの、口実を考えることが高いハードルになり、有休取得率が上がらなかったという。その反省から休暇制度を改正した。

 現在は年に2回の一斉休暇日「ロックの日」を設けるなどユニークな休暇を実施している。「ロックのように心を揺さぶる休日を」という意味だというが、「店舗や本社でイベントを立ち上げてみんなで休みます。この前は全社員でチーム分けしてボウリング大会をして、そのあとバーベキュー大会を行いました。ふだんデスクワークや外回りで顔を合わせにくい社員同士の交流の場として、社内の一体感を築くのに大いに貢献しています」(広報室)

 生産性を上げるための働き方を改革するなら、まず休み方から考えるべきというのは、経済評論家の加谷珪一氏。

「ゴールデンウィークの10連休など日本は一斉に休む日が多すぎる。せっかくの休日でも道路は渋滞、人気スポットは超満員、航空チケットも割高となってしまい、効率が悪い。自由に自己裁量で休みを取れるようにするところから、働き方を考えていく時期に来ているのではないか」

 ユニークな休暇制度を実施している企業の業績がいいのは、そのあたりに理由があるのかもしれない。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2019年7月5日号