器用すぎる投手は、そういう時期になった時にコーナーに出し入れしようと考える。内外高低の四隅を使う。私の時代はそうだった。今はツーシームやカットボールがある。そして打者も「絶対に真ん中にはこない」という意識で対処する投手と「真ん中からどこに動くか分からない」投手とどちらが嫌か。そこに大輔はチェンジアップとカーブ、スライダーと左右に大きく曲がる球がある。曲がり幅も違う。「予測不能な投球」こそ、生きる道なのだと彼の投球を見て思った。

 中6日で回ろうとするなら、この形がいい。ひじ、肩へのダメージも少ないだろう。ナックルボーラーではないけど、それに似た感覚を打者は覚えるのではないかな。阪神の若いバッターたちが戸惑っていたように見えた。

 そして大輔が一番分かっているだろうが、これは2、3失点で抑えるための投球である。ソロ本塁打はOK、単打はOKと割り切って投げ込んでいくこと。そしてイニングを消化して先発の役割を果たすことだ。もし、この形が確立できれば、大輔オリジナルの形を生み出せる。

 1軍復帰は7月上旬以降になるのかな。中日は投手陣が今、先発も中継ぎも崩壊の危機にある。夏場に頼るのはベテランの力だ。投打に年々レベルアップする野球界で、彼のスタイルがどこまで通じるか。フルスイング全盛の時代。1軍でどれだけ勝負できるかをじっくりと見たい。

週刊朝日  2019年7月5日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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