佐々木さんは1951年に劇団民芸の研究生となり、舞台をメインに活躍。71年の民芸退団後はテレビドラマへの出演が増えた。

 アルファエージェンシーの万代博実社長と佐々木さんの出会いは40年前にさかのぼる。

「前の事務所を辞めた佐々木さんが、うちに入りたいと来られたので、喜んでご一緒させてください、と」

 83年には「ふぞろいの林檎たち」(TBS系)で、小林薫と中井貴一の母を演じ、子供が産めない嫁につらく当たる姑役が評判に。2007年に放送された井上真央主演の「花より男子2」(同)に出演。メイド頭・タマを演じた。

 08年のNHK大河ドラマ「篤姫」では篤姫の乳母役を好演し、代表作の一つに。冒頭の井口監督が佐々木さんと仕事をしたのは2度目で、最初は深夜ドラマ「神様のイタズラ」(BS-TBS)だったという。

「女子中学生とおばあちゃんの体が入れ替わってしまうというコメディーでした。佐々木さんは女子中学生のように『イエーイ』『まじすごい』と言い、かわいらしいしぐさをしてくれました」

 万代社長が語る。

「年を重ねても自分に厳しく、コメディーやシリアスな役でも、こわもてやチャーミングなおばあちゃん役でもなんでもこなした」

 たしかに90歳になったが、広い守備範囲を生かし、「体が動くうちは仕事をしたい」と周囲に語っていた。「惡の華」「記憶屋」ほか2作、撮影済みの遺作があり、今年から来年にかけて公開される。(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2019年7月5日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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