年金問題で追い詰められ、安倍首相の「解散発言」が出るか注目された党首討論だったが、討論すらなかった (c)朝日新聞社
年金問題で追い詰められ、安倍首相の「解散発言」が出るか注目された党首討論だったが、討論すらなかった (c)朝日新聞社

 6月19日にあった党首討論。安倍晋三首相にはどこか余裕すら感じられた。野党の質問には正面から答えず、座っている時は足を組んで時折笑顔を見せていた。

 官邸幹部の一人は話す。

「野党が我々に対し、本気で攻めてこようとしていないのがわかった」

 安倍首相を刺激しすぎて衆院の解散に踏み切られてはたまらないと、野党が及び腰になっていたというのだ。

「(党首討論は)おもしろくなかった、と漏らす自民党議員も多くいた。そこまで与党側に言わせてしまっては、すでに勝負ありでしょ」(政治部記者)

 与党側はもともと、党首討論をかなり警戒し、一つの山場と見ていた。

 麻生太郎金融担当相の報告書受け取り拒否問題に続き、金融庁が独自に、それまでの「老後2千万円」を超える「3千万円が必要」との試算をしていたことも明らかになった。65歳で退職してから30年、月の生活費を25万円とし、支出額を計9500万~1億1千万円と仮定。年金や退職金以外に必要な資産形成額を「1500万~3千万円」と見積もったものだ。

 野党とすれば、党首討論は年金問題で安倍首相を追い詰め、その勢いで選挙戦へ……とのシナリオが理想だったのだろう。しかし、

「解散をちらつかされ、しかも、時間もほとんどなく、思い切った攻めができなかった」(野党議員)。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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