身長203センチの八村はベナン人の父と、日本人の母を持ち、富山県で生まれた。宮城・明成高で全国高校選抜優勝大会(現・全国高校選手権)3連覇を達成し、卒業後にゴンザガ大に進学。2018~19年シーズン、全米が注目するNCAAトーナメントで、中心選手としてチームの8強入りに貢献した。

「NCAAでのスタッツはトップクラス。フィジカルが強く、守備もいい。バスケIQの高さも高く評価されています」(平氏)

 76年モントリオール五輪バスケ男子代表の北原憲彦氏も激賞する。自身も200センチ超のビッグマンとして活躍したが、「体型と身体能力が大きく違う」という。

「手が非常に長いうえ、走力、持久力、跳躍力、敏捷性など身体能力はNCAAの中でも優位にあった。まさに規格外です」

 高評価は、身体能力だけではないと北原氏は見る。

 八村はドラフト当日、着用したジャケットの内側の左右それぞれに、ベナンと日本をイメージした柄をあしらうという「粋な」演出をした。その人柄もまた、人々を引き付けるようだ。本拠ワシントンDCのキャピタルワン・アリーナでは、日本語で「八村塁選手、DCへようこそ」との看板が飾られた。

「米国では一般的に『レピュテーション』という、いわゆる評判を査定する項目があります。八村選手の勤勉さや謙虚な姿勢も当然、評価されているはずです」(北原氏)

 Bリーグ栃木の田臥勇太(38)が日本人初のNBA選手になってから15年。北原氏は言う。

「世界中から厳選された選手が集まるNBAのドラフト上位で日本人の名が呼ばれるなんて夢のようです」

 夢を現実とする八村の姿を目に焼き付けたい。(秦正理)

※週刊朝日オンライン限定記事

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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