同フォーラムで広報担当を務める五十嵐実氏は、川の支流から流れ込んでくるごみが多いと言う。

「ほとんどは堤防のある本流からではなく、支流や橋の上から流れ込んできたものです。そのまま東京湾へ注いでしまうものが相当あります。川の水際は自治体の管轄から外れているためにごみ処理がされず、護岸の土にはMPやプラスチック成形の材料となるレジンペレットがたまっています。回収しても、半年もすればまたごみが増える状態です」

 東京農工大学の高田秀重教授(環境資源科学)は、家庭排水からたくさん出ていると指摘する。

「洗濯の際に出る服の化学繊維やスポンジくずなどがそうです。ほとんどは下水処理されますが、一部漏れるものがある。都内の下水処理場の放流水を調べたところ、1日当たり10億個程度のMPが多摩川に放流されていました。さらに都内23区に多い合流式下水道では、雨が降ると、排水が下水処理場に運ばれずに川や海に放流される場合があります。現行の下水処理システムでは、完全には取り除けないのです」

 国内の魚からもすでに見つかっている。高田氏が15年に東京湾のカタクチイワシの消化器官を調べたところ、約8割から検出されたのだ。

「全部で64匹を調べると、49匹から見つかりました。1匹当たり平均で2~3個、最大で15個です。大きさ1ミリ以下のポリエチレンやポリプロピレンの破片が80%以上を占め、マイクロビーズや化学繊維もありました」

 高田氏らが翌年に女川湾(宮城県)、東京湾、大阪湾、琵琶湖(滋賀県)など6カ所にエリアを広げて調査をしたところ、さらに驚く結果が出た。全ての地点の魚から見つかったのだ。全197匹中、マイワシ、カタクチイワシ、マアジ、イシダイ、ワカサギ、スズキの74匹から計140個が検出された。

 現在までに世界で製造されたプラスチックの総量は83億トン。ごみとして海へ流れ込むのは3%とも言われる。膨大なMPが海にたまっているのは間違いない。

 グリーンピースが昨年、世界の塩を調べたところ、ほとんどの製品にMPが含まれていることがわかった。グリーンピース・ジャパンの大舘弘昌氏が言う。

「世界の21の地域で作られた39のブランド塩のうち、36種類から見つかりました。1キロ当たり506個の量です。最も多く含まれていたのは海塩。次いで湖塩、岩塩の順です。毎日10グラムずつ塩分をとるとすると、年間で2千個近いMPを体内に取り込む計算になります」

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