私が虚空の存在を感じたのは、30年前に中国・内モンゴル自治区のハイラルを訪れ、ホロンバイル大草原の真っただ中に立ったときでした。

 四方八方が地平線です。空の青、雲の白、草の緑。この3色の世界にひとりで立ったときに、虚空を感じました。私が死んだら帰っていく世界がここにあると、実感することができたのです。

 それ以来、2年に1回はホロンバイル大草原を訪れることにしています。大草原に立って、大いなる虚空を感じ、自分が帰る世界を確認するのです。

 死後の世界、つまり虚空との交流は大事なことなのです。虚空と親しむことにより、死を恐れることがなくなるし、いざというときに、スムーズに死後の世界に入っていけるようになると思うのです。

 ホロンバイル大草原に行かなくても虚空と交流を図れるのが呼吸法です。気功にしろ、ヨガにしろ、座禅にしろ、その呼吸法の真価はスピリチュアルなところにあります。吸う息によって虚空の気をいただき、呼(は)く息によってわが内なる気を虚空に手渡すのです。

 最初は虚空をイメージするだけでいいのです。その上で、ゆっくり、深く呼吸して、虚空との交流を深めてみてください。

週刊朝日  2019年6月28日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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