話していて安心できると、自分もいろんなことを思い出して他の症状を話せたりするんですよね。もちろん先生側もいろんな患者さんを相手にして大変だと思うのですが、先生のちょっとした一言で患者の僕らはかなり動揺したり、焦ったりするのです。

 そして今年。ある病気になりまして。その病院で、先生が診察するときに過去の履歴を見て言ったんです。「あなた、5年前に僕が一度診てますね」と。僕が「あ、そうだったんですね」と言ったら、先生は僕を見て言ったんです。「大丈夫。あなたも僕のことを覚えてなければ、僕もあなたのことを覚えてない」と。それいる?? それ言う必要ある?? え? 先生なりのギャグ? 違うよね? え? 思ったことがつい出ちゃうタイプ? だとしたらそれダメだよね。

 僕はそれを言われて心が折れました。どんなに名医だとしても、僕はあの人に診てもらうのはしんどいなと。相性、大事だな。

週刊朝日  2019年6月28日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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