このとき、フィルターではキャッチできない細かなハウスダストや油を含んだ煙などが吸い込まれると、アルミフィンに付着して目詰まりを起こす。冷たいアルミフィンからは常に結露水が発生し、汚れとともに下へ流れ、ドレンパンという受け皿部分にたまる。

 本来、この水はドレンホースを通って室外へ排水されるが、ホコリがダムのようにたまってくると排水機能が落ち、湿度が上がり、カビにとって格好のえさ場になる。こうして発生したカビは、ファンや吹き出し口のほうへ入っていき、冷房を使わない冬の期間もさほど死滅せず、再び夏に繁殖を始めるのだという。

 さらに、尾崎さんによると、日本の住宅事情もエアコン内部のカビ繁殖に一役買っているという。昔はキッチンとリビングが別々の構造が主流だったが、今はキッチンとリビング・ダイニングが連なったLDKが一般的。そうすると、キッチンの換気扇で吸いきれない油を含んだ空気を、エアコンが吸い込んでしまうという。一方、寝室や子供部屋などのエアコンは比較的カビが繁殖しにくいそうだ。

「換気扇のほうが常に油汚れを吸うので性能が落ちやすい。エアコンと同時に使うと、吸い込む力はだいたいエアコンが上回ります。高性能化も進んでいるので、エアコンがどんどん広範囲の空気を吸い込むようになってきた。キッチンから来る油汚れには、カビの大好物のたんぱく質が含まれるので、ますます繁殖が進んでしまうんです」

 前出の高鳥代表は「一般消費者が自分でクリーンにできる機能をつくってほしい」とメーカーに求める。毎年のように酷暑に見舞われる日本。まずはリビングのエアコンの吹き出し口を確認してみよう。(本誌・緒方麦)

週刊朝日  2019年6月28日号