【塩コショウ入れ沼】放送作家・たむらようこ
塩コショウ沼にどっぷりハマってます。あ、食べるほうじゃありません、塩コショウの入れ物、特に人形タイプのものを集めてます。陶器でできた2匹の可愛い猫の置物(ハート)かと思ったら片方の頭からは塩が、もう片方の頭からはコショウが出てくるというアレです。
ナメてはいけません。この沼は深いんです。例えばハワイの土産物屋で見つけた美女の上半身の置物。丸い胸の部分が取り外せて右のおっぱいからは塩、左のおっぱいからはコショウが出てきます。スパイシーおっぱい。赤ちゃんもお父さんも泣きますよコレ。
ほかにも女性の足首から下だけの足。右足が塩、左足がコショウです。なぜ足を塩コショウ入れに!? 果てはゼンマイ仕掛けで動くムダ機能付きまであるんです。
初めて興味を持ったのは20代のころ。ニューヨークの蚤の市で見つけた「足」に心奪われました。
塩コショウ入れ沼の延長線上に将来の夢もあります。塩コショウ入れで劇団を作りたいのです。すでに帽子などの小道具から出演者、ペット役までそろってます。
塩コショウを入れたこと? ありません。魅力は「用の美」ならぬ「無用の美」なのですから。
【カメラ沼】小説家・鳴神響一
風景写真を趣味にしてすぐの30歳のころ、ほしかった中判一眼レフは標準レンズセットでも30万円もしました。GS645Sは固定レンズ付きで実売8万円だったので、なんとか手に入れました。
フォーカスも露出もマニュアルの完全機械式でした。
すぐに降雪間近の尾瀬でキャンプをして、夜明けの中田代の写真を撮りに行きました。
日が昇ると、高級一眼レフのカメラマンたちが「シャッターが下りない!」と騒ぎ始めたのです。
電気式カメラ群は酷寒のためバッテリー低下を起こしていました。
僕は余裕でシャッターを切りました。
尾瀬の写真は二つの写真展で入選。東京駅の丸の内ホールでも展示されました。
この小さな成功のせいで、カメラ沼にハマりました。
四半世紀の間に、クルマ1台が買えるくらいカメラとレンズをそろえる羽目に陥ったのです。
いまは時間がありません。仕事場周辺数百メートルの風景しか撮れなくて、とても寂しいですね。
(本誌・羽富宏文)
※週刊朝日 2019年6月21日号