「子どもたちが巣立って、持ち家の部屋が空いている」といったシニアで、若い世代との助け合いを望む人には、NPO法人リブ&リブが提供する「異世代ホームシェア」がある。

 空き部屋のある家に住んでいる、独り暮らしや夫婦2人暮らしの健康な高齢者と、首都圏で住まいを探す大学生を、リブ&リブがマッチングする。

「シニアは話し相手ができて孤立化を防げる。学生は都心での住居問題を解決でき、経済的な支援になる。シニアと若者がお互いに助け合うことが、活動の狙いです」と、リブ&リブ代表理事の石橋えい子さん(※2)は話す。

 リブ&リブのコーディネーターはシニアと学生双方にニーズや期待を聞き、相性の良さそうな候補者を引き合わせる。2泊程度のお試し宿泊をして、双方OKとなって初めて、ホームシェアを始める。

 NPO会員同士の助け合いという位置づけのため、家賃は発生しない。ただ生活に必要な雑費、光熱費として、学生は月2万円をシニアに支払う。今のところ学生の希望者が多く、家を提供するシニアは少ないため、期間は1年をめどにしているという。

 東京都練馬区に立つ、元は二世帯住宅だった一戸建てに単身で暮らす宮本幸一さん(77)は、15年から異世代ホームシェアを始めた。これまで長期短期合わせて11人の若者と生活を共にしてきた。

「エネルギーあふれる若者との共同生活は魅力的だし、元気をもらえるので続けています」

 今年4月からホームシェアをするのは、東京歯科大学1年生の高橋和さん。宮城県出身の高橋さんは、昨年秋から東京での住まいを探していた。たまたま母親がリブ&リブの活動をテレビで見て、「話だけでも聞いてみたら」と勧められたのだった。面接やお試し宿泊で宮本さんの人柄に惹かれたという高橋さんは、ホームシェアのお世話になることにした。

 交流を深めるため、リブ&リブでは週に1、2回、同居するシニアと学生が夕食を共にすることを求めている。宮本さんと高橋さんは話し合い、週1回どちらかが夕食を作り、ご馳走になったほうが片づけをすることに決めた。

「高橋さんはここに来る前は実家暮らしで、4月から自炊を始めたばかり。それなのに先日作ってくれたポークピカタは絶品でした」と、宮本さんはほめる。

 高橋さんも、食事中の話で感銘を受けたことがあると応じる。高橋さんは宮本さんに、日々言葉が書かれている日めくりカレンダーが、トイレや部屋に掛かっていることについて聞いた。以前宮本さんは交通事故にあい、そのとき出会ったある人の言葉が心に残った。その人の言葉を紹介するカレンダーなのだと、教えてくれたという。

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