「8人いた鎌倉での食事会メンバーは、3人まで減ってしまった。この5月で最後の集まりにしようと決めました」

 11年の東日本大震災で一軒家での独り暮らしが怖くなり、ここに移ったのは粂野よ至子さん(87)※だ。おもちゃコンサルタントマスターの資格を持ち、子どもたちとおもちゃで遊ぶ活動をしている。

 沢淑さん(87)は、06年から住んでいる。かつては小学校教員と現代芸術家の二足のわらじをはき、今も創作を続けている。

「私の作品はとても大きいので自室に収まりきらない。時には食堂など共有部分を制作に使わせてもらっています」と熊沢さん。

 アトリエで制作に打ち込んでいる熊沢さんの姿を見て、田中さんは「造形はセンスと力の秋の展」と俳句を詠んだ。

「主体的に動けばどんな使い方もできる。ここは自分を育てられる場所です」と熊沢さんは笑う。

 現在、COCOたかくらには女性7人が入居している。「会社にお勤めの方、デイサービスを利用される方、趣味に打ち込む人もいる。それぞれ生活を楽しんでいます」と、入居者の世話役であるライフサポーターの亀井里江子さんは話す。

 先にグループリビングはケア提供が主な目的の施設ではないと述べたが、介護などのケアが受けられないワケではない。入居者は介護保険を活用してデイサービスに行ったり、入浴介助を受けたりしている。

「COCO湘南台では訪問看護やターミナルケアを活用して、最期を迎えた方もいました」(亀井さん)

 続いて紹介するのは、異世代の若者や留学生との交流を楽しめる物件だ。

 川崎市の小田急向ケ丘遊園駅から徒歩9分の「クロスコート向ケ丘」は、かつては大家の居住部分と下宿部屋が一体だった、築50年の民家をリノベーションした。大家の居住スペースだった部分は、食堂やミーティングスペースとして開放されている。広さ14~15平方メートルの部屋が全20室。家賃は管理費込みで5万円前後、室内にはミニキッチンやバス、シャワーもある。

「シェアハウス、アパート、かつての下宿の、いいとこ取りをしました」と、オーナーの夏山栄敏さんは話す。

「いいとこ取り」が実現したことには、夏山さんの妻の、妹夫妻の存在が大きかった。妹の夫は日本料理店で修業し、長年自動車メーカーの社員食堂で働いていた。

「食事付きのアパートにしたいという私の思いを聞いて、家族で住み込みの料理人を引き受けてくれました」(夏山さん)

 プロの料理人による栄養バランスの取れた食事は、夕食500円、朝食200円という安さ。食事どきの食堂は、楽しそうに雑談する入居者でにぎわう。

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