東京は“笑える謎”の宝庫? 30年撮り続けた122点の写真集 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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東京は“笑える謎”の宝庫? 30年撮り続けた122点の写真集

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週刊朝日
謎めく東京 (※写真はイメージ) (c)朝日新聞社

謎めく東京 (※写真はイメージ) (c)朝日新聞社

 作家の片岡義男氏が選んだ“今週の一冊”。今回は『東京ワンダー 揺らぐ街』(熊切圭介、クレヴィス 1852円)。

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 写真家は東京の下谷で生まれた。

 東京の人だ。だからその東京が写真の被写体になるとき、写真家は東京に対して自由自在だ。

 その東京は、写真家によれば、「不可思議な魅力」を持った場所だ。「右に左に前に後ろに揺らいでいる」という。この写真集の題名に『揺らぐ街』とあるのは、そのことによっている。「揺らぐ」という言いかたは、「捉えどころがない」という言葉に置き換えることが出来る、と写真家は言う。

 捉えどころのなさは、なぜそうなのか、誰にもわからない謎でもある。写真家自身によるあとがきの題名は、「謎多き街を撮る」となっている。謎は、じつに多くの場合、おかしみをたたえている。謎はおかしい。笑いを誘う。写真家は東京を歩いて謎を写真に撮る。その写真は、見ておかしい。笑える。本書には122点の写真が収録してある。30年にわたって撮り続けたなかの選りすぐりだという。その写真がとらえたおかしさは、高度な次元に到達している。東京が持っている多くの謎のひとつひとつが、そうなのか。あるいは、写真家の写真が高度なのか。後者だろう、と僕は思う。

 東京が笑える謎にいくら満ちていようとも、それらに遭遇しないことには、どうにもならない。だから写真家は東京を歩く。謎が点在するのではなく、歩いていく線の上でつらなっている。線は面になる。だから謎は、面の上に散っている。なにか笑える謎はないか、と点を追うのではなく、線上のつながりで、面の上での広がりで、東京を撮る、そして謎をとらえる。

「カメラをいつも持ち歩いているわけではないが、なるべく持つようにしている。しかし、持たないときに限って、あ、こういうときに持ってればよかったということがある」と写真家は書く。

 28ミリのレンズを使うことが圧倒的に多いそうだ。ハッセルブラッドのときもレンズは広角で距離は目測だという。素早く一枚だけ撮る。これはこの写真家の極意であるようだ。しつこく撮ると、写真を撮っていることが相手に伝わり、警戒されるからだ。


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