不正入試が発覚した東京医科大=東京都新宿区 (c)朝日新聞社
不正入試が発覚した東京医科大=東京都新宿区 (c)朝日新聞社
合格者が多い主な女子校 (週刊朝日2019年6月14日号より)
合格者が多い主な女子校 (週刊朝日2019年6月14日号より)
医学部の偏差値は上昇している(左)/私大医学部に6年間でかかる学費 (週刊朝日2019年6月14日号より)
医学部の偏差値は上昇している(左)/私大医学部に6年間でかかる学費 (週刊朝日2019年6月14日号より)

 医師になれる医学部医学科は、大学入試の中でも難易度が高い。合格者のランキングでは全国の有名進学校が並ぶ。前年に不正入試が発覚したことで、2019年は女性の合格者が急増し女子校が躍進するなど、これまでと大きく変わった。都心の私立の人気が高まる一方で、地方では入学辞退が相次ぐところもある。いま医学部入試で何が起こっているのか。

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「三つの医学部に合格することができました」

 こう笑顔をこぼすのは都内に住む宗田美友さん(20)。アレルギーの病気を親身になって診てくれた医師にあこがれ、医師を目指していた。2浪の末、今年晴れて第1志望の私大に入学できた。

 東京医科大など多くの医学部で発覚した不正入試。宗田さんはこれまでの医学部受験の“常識”をこう語る。

「女子や多浪生は不利だということを、現役のときから聞いて、当然のように受け止めていました。そのため、1次試験では合格ラインのギリギリを狙っていたのではダメ。10~20点は高く取らないといけないという意識が強かったです」

 今年は宗田さんのように努力の成果が報われた女子が多かった。長年女子を差別していた東京医科大は、18年の女子の合格者は34人だった。それが、今年は一気にほぼ3倍の95人まで増えた。志願者数を合格者数で割った「合格倍率」で見ると、18年は女子44.6倍、男子13.0倍と、女子のほうが男子よりずっと合格しにくかった。これが今年は、女子5.7倍、男子5.8倍とほぼ同じになった。

「外部有識者の監査委員会を設けるなど、再発防止に取り組みました。適切に入試ができたと思っています」(広報担当者)

 ほかにも日本大や昭和大など文部科学省から不適切入試を指摘された学校を中心に、女子や多浪生の合格者が増えているとみられる。

 国公私立全82医学部の合格者高校ランキングでは、東海(愛知)や開成(東京)、海城(同)や巣鴨(同)など中高一貫の私立男子校が例年どおり上位に並ぶなか、今年は私立女子校も目立つことがわかる。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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