厚生労働省の資料を基に作成 (週刊朝日2019年6月14日号より)
厚生労働省の資料を基に作成 (週刊朝日2019年6月14日号より)
受給開始年齢を繰り上げた場合の「損益分岐点」と受給開始年齢を繰り下げた場合の「損益分岐点」 (※社会保険労務士の北村庄吾氏の試算を基に作成 週刊朝日2019年6月14日号より)
受給開始年齢を繰り上げた場合の「損益分岐点」と受給開始年齢を繰り下げた場合の「損益分岐点」 (※社会保険労務士の北村庄吾氏の試算を基に作成 週刊朝日2019年6月14日号より)
健康寿命を考えると早めにもらったほうがお得なケースも (※社会保険労務士の北村庄吾氏の試算を基に作成 週刊朝日2019年6月14日号より)
健康寿命を考えると早めにもらったほうがお得なケースも (※社会保険労務士の北村庄吾氏の試算を基に作成 週刊朝日2019年6月14日号より)

 今年は政府が年金の財政状況を5年ぶりに検証する年だ。少子高齢化で財政は厳しく、大きな見直しが避けられない。高齢者に長く働いてもらうためだとして、受給開始年齢を70歳超まで繰り下げられる制度が導入されそうだ。政府は繰り下げでもらえる額が増えるとPRするが、だまされてはいけない。「健康寿命」を考えると、元気なうちに早めにもらうほうがお得かもしれないのだ。

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 公的年金は現役世代や企業から集めた保険料に税金を加え、高齢者に配分する仕組み。少子高齢化が進むなか、保険料を払う人と給付を受ける人のバランスをどう保つかが課題となる。

 国は5年ごとに、年金財政の長期見通しを検証する。物価や賃金など様々な前提をもとに、将来の保険料や給付額を推計。それをもとに、年金制度の見直しを議論する。厚生労働省が6月中にも年金財政の状況を発表し、年末に向けて見直し作業が具体化する。

 前回の検証では、最も悲観的なケースで2051年度に年金積立金が枯渇するという試算が示された。今回はさらに厳しい見通しが示され、保険料の引き上げや給付額のカットなど、痛みを伴う見直しが議論されそうだ。

 中でも注目されているのが、受給開始年齢を70歳超まで繰り下げられる制度と、会社員の妻ら専業主婦の年金改悪の問題だ。こうした見直しには痛みを伴うはずなのに、政府は前向きな改革のように取り繕おうとしている。これからの「年金大削減時代」を生き抜くには、政府の思惑を見抜く知恵が求められる。

 まずは受給開始年齢の繰り下げ問題について見ていこう。年金は現在、原則65歳からもらうことができる。「原則」としているのは、受給開始時期を60~70歳の間で選ぶことができるためだ。時期を早めればその分もらう額が減り、遅くすればもらう額が増える。

 例えば、繰り下げだと1カ月ごとに受取額は0.7%増える。逆に、繰り上げは1カ月ごとに0.5%減る。60歳まで5年繰り上げる場合、受給額は30%減り、70歳まで繰り下げると42%増える計算だ。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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