そうならないための出発点は、時代の空気を疑うこと。正義といわれるものも疑うべきです。それはただ「力を持つ人が言うこと」に過ぎないのかもしれないからです。

 本当に自由な人とは、自分で考えることができる人です。自分で考える人は自分を信じることができる人です。自分を信じる人は自分を疑うこともできる人です。

 不安感をなくすには、自分自身に頼る以外にありません。判断基準は、あなた自身なのです。現状を疑い、より良い未来について考え続けること。それを繰り返すことで、今より良い社会に近づくはずです。

 未来を悲観視しなくてもいい。人類は、進歩しているから。100年後の人類はきっと今より良い世界を創っているだろうと思いますよ。

 この連載は今回で終わります。もともと、よそ様の相談事に助言するなど、おこがましいにも程があると思っていました。実際、お役に立つ回答はほとんどできなかったと思います。

 しかし、ご相談に対して、どうお答えするか考える中で、私自身の考えを深めることはできたように思います。ご相談をお寄せくださった方々には感謝申し上げます。

 また、全国至る所で「針路相談、読んでますよ」というお声もかけていただきました。読者の皆様にもお礼申し上げます。ありがとうございました。

週刊朝日  2019年6月14日号

著者プロフィールを見る
前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

前川喜平の記事一覧はこちら