なぜ向上心ラップになったのか――。それは負けず嫌いの性格が源泉となっていると自己分析している。

「ふり返ると、僕は幼少時から、上へ! 上へ! と思っていました。幼稚園生のとき、運動会のリレーで、僕の前の走者が転倒してほかの組から大きく差をつけられました。もう追いつけないほどなのに、僕は起き上がって走ってくる仲間を激しく鼓舞し続けたそうです。先生や父兄がみんな驚いて、僕の母親はちょっと恥ずかしかったと話していました。高校2年のときには、クラスメイトに、今から受験勉強しても手遅れと言われました。その日から僕は深夜まで勉強し、通学の電車内でも学校の休み時間も勉強して慶応大学に合格できました。入試の時期にはもう自分のためと思っていましたけれど、きっかけはクラスメイトの言葉です。こいつより偏差値の高い大学に入ると決めました(笑)」

 そういう性格がアルバム『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』の収録曲の歌詞ににじんでいる。そして、KREVAの前向きなラップになっている。(神舘和典)

※週刊朝日オンライン限定記事

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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