箱根山の警戒レベル引き上げ “大噴火”で想定される被害とは?

亀井洋志週刊朝日
 箱根山(神奈川県箱根町)で噴火のリスクが高まっている。気象庁は5月19日、箱根山の火山性地震が急増したことを受け、噴火警戒レベルを1の「活火山であることに留意」から、2の「火口周辺規制」に引き上げた。

 地震は18日に43回、19日に74回観測された。その後は減少傾向で火山活動は収まりつつあるという見方もあるが、地球物理学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授は警戒を呼びかける。

「安心するのはまだ早く、注視する必要があります。火山性地震は噴火前に起きることが多いのですが、噴火の前兆を正確にとらえるのは難しいことなのです」

 箱根山では本格的な噴火は、12世紀後半~13世紀以来起きていない。2015年にごく小規模な噴火が発生。警戒レベルは3の「入山規制」に引き上げられ、温泉街から客足が遠のいた。

 5月24日時点で、箱根ロープウェイは終日運休となり、大涌谷につながる県道も通行止めになっている。観光事業にも大きな影響が出ている。

「懸念されるのは、これから夏の行楽シーズンを迎えるにあたり“政治的判断”によって警戒レベルが引き下げられることです。15年の当時も、年末年始の観光事業に配慮して、11月に引き下げられたとみられています」(島村さん)

 箱根町には年間2千万人を超える観光客が訪れる。防災と観光の共存は悩ましい問題だが、もし大噴火が起きれば想像を絶する被害をもたらす。3200年前の噴火では山の半分が吹き飛ばされ、仙石原や芦ノ湖ができた。

「6万6千年前の大噴火では、火砕流が現在の横浜市あたりまで到達しました。速さは新幹線並みで、とても逃げ切れません」

 島村さんが着目するのは富士五湖の一つ、河口湖の水位が2メートル以上も下がったこと。

「少雨で干上がったのかもしれませんが、箱根山や富士山噴火の前兆でないとは言い切れません。富士山は1707年の宝永噴火を最後に静かですが、もし噴火すると2時間ほどで大量の火山灰が東京にも降り注ぐ。健康被害ばかりか、交通網などインフラにも深刻な影響を与えます」

 日本には111もの活火山がある。箱根や富士山を含め、いつ、どこで大きな噴火が起こるのかわからない。25日には千葉県を震源とする震度5弱の地震もあった。私たちにできるのは警戒を続け、備えておくことだけだ。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2019年6月7日号

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