前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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足早に横断歩道を渡るビジネスマンたち (c)朝日新聞社 (※写真はイメージ)
足早に横断歩道を渡るビジネスマンたち (c)朝日新聞社 (※写真はイメージ)

 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、同僚との仕事量に疑問を抱く会社員からの相談です。

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Q:私は同じ部署の他の人と比べて明らかに仕事量が多いです。「仕事だから」と思ってきましたが、スムーズに遂行を重ねるごとに「コイツに頼めばやってくれる」と思われ、どんどん仕事を振られるようになりました。一方で、何かあればすぐに「体調が悪い」などと逃げる同僚は仕事をあまり振られず、楽な日々を過ごしています。仕事を断るのも癪(しゃく)なので、黙って受けてきましたが、仕事が楽そうな同僚を見るにつけ、「結局、組織でやっていくには、こういう奴の方が得なのか」と思ってしまう自分がいます。(神奈川県・46歳・男性・会社員)

A:仕事というのは、できる人のところに集中しちゃうんですよねえ。どこの組織でもそう。

 実はこれは、人間だけじゃなくて、アリの世界でも似たようなことが起こってるんです。これを「働きアリの法則」と言うんですが、働きアリ全体のうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくるというもの。そしてソコソコ働いているのが全体の6割で、残りの2割はサボっているんです。さらに、よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになるんです。これってなんだか、人間の世界と似た構図だと思いませんか?

 つい働きすぎてしまう、そんなあなたにおすすめしたいのは、ずばりサボること。その強い責任感をちょっとばかし緩めて、「何だか風邪っぽくて……」とか「知り合いに不幸があって……」とか適当なことを言って休んだらいいんです。長く働き続けるには、時に「逃げる」ことだって大事なことです。あなたは恐らく年休もまともに消化していないんでしょう。休んでいい権利はあるのに、責任感から休めないのでは。そういう人の中には、ものすごく根を詰めて、体を壊してしまうような人もいます。鬱々とした感情で仕事に向き合うより、ぱっと休んでリフレッシュして、また新たな気持ちで仕事に臨んだ方がいいですよ。

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前川喜平

前川喜平

1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て2016年、文部科学事務次官。17年、同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。

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