<首相は、「前の天皇陛下はいつも座ったままだったが、今の陛下は部屋のドアまで送ってくださって大変恐縮した」と話した>

 西村次長は、官邸から首相はそのような発言をしていないと聞いた、と否定した。そもそも、上皇さまと上皇后さまは、一般の人であっても、相手の姿が見えなくなるまで立って見送る、といったお人柄で知られている。西村次長が否定したように、「座ったまま見送る」ようなことがなかったとしたら、記者が取材をした関係者が、話を誤って伝えたのだろうか。

「真実がどうであれ、宮内庁の抗議は、永田町でほとんど話題になっていない」

 と話すのは、ベテラン政治評論家だ。「令和」決定時の首相談話、そして今回の内奏の異例の動画・写真即日公開など「選挙を意識して皇室を政治に絡めている」として、こう続ける。

「しかし、この『安倍1強』政治のなか、安倍首相にプラスにならない話には関わりたくない、という空気がはびこっている」

(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2019年6月7日号