その土地は、田辺市の中心街にあるホテルと地元の大手流通メーカーのショッピングモールに隣接している。そこに、田辺市役所の新庁舎の建設計画が浮上したのは、2013年のことだった。もし、新庁舎ができれば、野崎さんの所有する土地は駐車場の進入路にあたる。田辺市が取得できなければ、新庁舎の計画の見直しも余儀なくされるところだったという。野崎さんは生前、この土地を所有したことを周囲に吹聴。ショッピングモールの駐車場だったが、自分の土地分にブロックやカラフルなパレットを山積みして、アピールしていたという。

「私も土地を見たが、ショッピングモールとは思えない異様な景観だった。そこが幸助の狙いで、そうやってアピールし、ショッピングモールを運営する会社や市役所などに圧をかけていたようだ。真砂市長との宴会後、幸助はよく従業員に車を運転させ、市役所で売却交渉していた」(前出の知人)

 そして2015年6月、ショッピングモールを運営する大手流通メーカーが野崎さんの土地を買い取った。野崎さんの従業員の一人はその時、野崎さんがこう自慢していたことを鮮明に記憶している。

「30年近く前に借金のカタでとった土地が、ええ値段になった。ほとんど価値のなかった土地が何十倍に生まれ変わった。大きく土地が化けた。これが私のビジネスだ」

 問題の土地は現在、大手流通メーカーから田辺市が売買予約という形で登記されていた。筆者が真砂市長を直撃すると、疑惑をこう否定した。

「当該の土地は、周辺の道路事情で渋滞が日常化。そこで、市役所と大手流通メーカー、野崎さんの3者で合意し、整備しました。しかし、野崎さんの土地は大手流通メーカーが買ったので、市役所は関係ありません。市役所移転とは直接、関係ない。田辺市が高額な値段で野崎さんの土地を買い取ったのではないかと市民から聞かれることがありますが、市役所でもはっきりした値段はわかりません。法外な値段で取引したような話は聞いていません」

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