顧問に限ったことではないが、「大企業風」を吹かせたり過去の自慢話をしたりするのはご法度だ。齋藤さんは顧問先に視点や価値観を合わせることが大事だと強調する。

「顧問先の若手・中堅社員はITリテラシーが高く、転職が当たり前だと思っている世代です。60歳超の顧問側は終身雇用育ちでギャップがあるので、外国で働くのと同様に異文化コミュニケーションが必要になります。メールは即レスが当たり前。常に結果が求められているので短期的な成果を出すことも大事です」

 専門性や人脈があれば可能性はどんどん広がる。

 大手広告会社「博報堂」元常務の泊三夫さん(70)は、昨年6月からコンサルティング会社の社長を務めている。

「橋や道路などインフラの老朽化対策が喫緊の課題になっています。現在はベテラン作業者の経験に頼っていますが、それをAIを使った効率的判定に変えていくシステムを開発している会社です」

 社長になるきっかけは、人を介して、この分野を長年研究している国立大の特任教授に「事業を社会化できませんか」と持ちかけられたから。

「さほど面識はなかったのですが、私が国土交通省の『道の駅』事業などに古くから関わり、人脈やノウハウがあることを知っていたのでしょう。社会的な事業は昔から大好きなので、すんなり引き受けました。もっとも、社長はあと1年ぐらいでバトンタッチする予定です」(泊さん)

 専門スキルが際立っていれば、向こうから話が転がり込んでくるのだ。芸は身を助(たす)く──何にせよ現役時代のスキル磨きが大切なようだ。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2019年5月31日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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