3年ぶりのニュー・アルバムを出したスガシカオ
3年ぶりのニュー・アルバムを出したスガシカオ
スガシカオ『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』(初回限定盤 CD+DVD)ビクター VIZL-1556 
スガシカオ『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』(初回限定盤 CD+DVD)ビクター VIZL-1556 

 スガシカオの3年ぶりのニュー・アルバム『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』に思わずニンマリだ。人を食ったタイトルもさることながら、アルバムの幕開けを飾るエレクトロ・ファンク風の表題曲はじめ、ヘヴィーでルーズなスタイル、ディスコ風などスガが本領を発揮したファンク・ナンバーに心が躍る。ダークでディープ、ヘヴィーでシリアスだった前作『THE LAST』とは打って変わったアルバムだ。安らぎを覚えるポップでメローなナンバーもある。粒だった演奏とサウンドの迫力やインパクト。中でも耳を引くのはスガシカオの歌声、その説得力だ。

【ニュー・アルバム『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』のジャケット写真はこちら】

 スガシカオは1966年、東京都渋谷区に生まれ小学校の頃に下町に移り育ったという。本作の初回限定盤のDVD収録の「ぶらり途中下船できない旅」での制作秘話で、育った下町の様子、荒れた中学校に通っていた話を明かしている。

 作曲やバンド活動を始めたのは大学時代からで、卒業後サラリーマン生活を送って後に退職して音楽活動に専念。インディーズからシングルを発表し、97年「ヒットチャートをかけぬけろ」でメジャー・デビューした。

 同曲はCMに起用されながらチャートにはランク・インしなかったが、アニメの挿入歌「黄金の月」で初チャート・イン。72位だったが、敬愛するスライ&ザ・ファミリー・ストーンやプリンス、ことにFLYING KIDSの影響を受けたファンク/ソウル・ミュージックを下敷きに、ポップ化した音楽性や、人間の内面に潜む恨み、ねたみ、ひがみなどを赤裸々に描いた毒気のある挑発的な歌詞、独特の声質や歌唱スタイルで話題を集めた。

 デビュー・アルバム『Clover』(97年)はチャートの10位、ベスト・アルバムの『Sugarless』(2001年)は1位を記録した。

 前後してスガの作詞、川村結花作曲のSMAPへの提供曲「夜空ノムコウ」がミリオン・セラーとなり、スガの存在が広く知られるということもあった。さらに、NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』の主題歌のために結成され、スガがヴォーカル、作詞、作曲を担当した「Progress」もお茶の間にその存在を印象づけた。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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