さて、それではイメージ療法は認知症にも有効なのでしょうか。私が思い浮かべるのは白隠禅師の「軟酥(なんそ)の法」です。これはまさに江戸時代に生まれたイメージ療法なのです。

 まず、色も香りも清浄な軟酥(牛や羊の乳を煮詰めて作ったバターのようなもの)を鴨の卵大にして、頭のてっぺんに置いたとイメージします。その絶妙な風味が頭蓋骨から浸み込み、脳細胞を潤し、全体に浸みわたります。

 その軟酥は、だんだんと下りてきて、両肩から左右の腕、両乳、胸膈の間、さらには肺、肝臓、胃、腸、そして背骨、骨盤へと浸みていきます。

 このように軟酥が体の中を浸み流れることをイメージすることで、五臓六腑の気の滞りや、その滞りによる痛みが流れ去っていきます。軟酥は体中を巡った後、両脚を温め、最後は足心(足の裏の中心)に至って止まります。

 軟酥は頭蓋骨から浸み込み、脳細胞全体を潤すのです。これをイメージすれば、認知症の予防にもつながるはずです。

週刊朝日  2019年5月24日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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