夏井:そういうクラスの方々は、俳句だけで食べてらっしゃるんじゃないですか。私はそうしたピラミッドを目指さないで、ぜんぜん違う場所で活動しようとしたので、俳句の世界の先生方からしたら、完全に「荒野の果ての外様大名」というイメージだと思います。

林:そうなんですか。

夏井:私は40年前に俳句を始めたんですけど、そのころから俳句って高齢化で、松山ですら「俳句はじいさんばあさんがやるもの」と言われていました。20~30代で俳句をやってるなんていったら、「なんで俳句なんかを。俳句なんて棺桶に足一本突っ込んでからやればいいんだ」と言われていたんです。

林:まあ、そんなことを。

夏井:地方でポツンと俳句をやってるお姉ちゃんがそんなこと心配する必要もないんだけれど、学校の先生を辞めて「俳句の仕事をしたいな」と考え始めたときに、「俳句の世界はこのまま放っておいたら根腐れしていくんじゃないか、だから俳句の種をまく仕事をやろう」と思いました。俳句が真ん中にあるとしたら、そっちにお尻を向けて、周りの荒野に種をまく緑化活動をやろうと。だから俳句界の本流の皆さんは「夏井というのが松山で何かやってる」ぐらいの感じだったと思いますよ。

林:今は、全国で句会をやってらっしゃるんでしょう?

夏井:はい。日本中ウロウロしてます。きのうは徳島の山の中だったんですけど、500人ぐらいのホールで「句会ライブ」してました。

林:500人が一斉に一句つくって提出するんですか。

夏井:「句会ライブ」ってそういうもので、俳句をやったことがない人たちに5分間で一句つくれる体になってお帰りいただくというのが「句会ライブ」なんです。その場で俳句をつくって、それを回収して舞台の上でものすごい勢いで選ぶんです。選ぶところもショーの一環というか。

林:きのうはいい句がありました?

夏井:ありました。決勝の7句までは私が決めるんです。俳句がヘタクソな人は、ヘタクソな句を選ぶから(笑)。そして1位はみんなの多数決で決めるんです。

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