病気介護が必要になっても人手が足りない。経済産業省によると、介護人材の需要は15年に187万人で、35年は307万人に増える。それに対し供給は15年に183万人だったものが、35年は228万人までしか増えない。差し引き79万人も不足する見込みだ。

 介護サービスを希望どおり受けられない高齢者が当然出る。高級な介護施設に入るなど十分なサービスを受けられるのは、資産が豊富な一部の人だけ。最後は家族が面倒を見るしかない。70代の子どもが90代の親を介護するような老老介護や、現役世代の介護離職が急増しそうだ。

 家族と一緒に暮らせる高齢者は、まだ恵まれているのかもしれない。一人暮らしの高齢者が増えるのだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、19年に691万人いる一人暮らし高齢者は、40年には896万人。高齢者の独居率は20%を超え5人に1人に。人との交流が少なくなり、うつや認知症などのリスクも高まる。

 身寄りのない一人暮らしの高齢者も珍しくなくなる。65歳以上の未婚率は15年に男性で5.9%、女性で4.5%だったのが、40年には男性で14.9%、女性で9.9%まで大幅に上昇すると予想されている。

 中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)は、孤独死が多発するという。

「一人暮らしの高齢者のうち半数が、生涯において配偶者も子どももいない人になるとみています。いざというときにかけつけてくれる人はいません。人知れず死を迎え、孤独死するケースも多くなります」

 高齢化で社会保障費は膨らむ。年金や医療、介護などのための「社会保障給付費」は、18年度の121兆円から、25年度に140兆円、40年度に190兆円と急拡大していくことが見込まれる。

 冒頭のサトシの物語のように、15~64歳の現役世代の負担は重くなる。1965年は10.8人で高齢者1人を支えるため余裕があった。2019年は1人に対し2.1人、40年には1.5人となる。

 社会保障給付費が現役世代にとってどのくらいの負担増になるか。18年度に1人あたり年間153万円だったのが、25年度に162万円、40年度に215万円になる。

 高齢者の家計も苦しい。年金額は目減りしていく。18年度に1人あたり151万円だった給付額が、25年度に135万円、40年度に127万円に減ると推計されている。

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