サトシは物心ついたときには令和になっていた。平成はバブル経済の崩壊で大変だったと学校で習った。AIで便利になった令和のほうがいい時代だと思うが、「こんな時代になるとは思わなかった」という父のつぶやきが耳に残る。

 こんなサトシの未来が、やってくるかもしれない。

 令和の時代に起こることとして、来年夏には東京五輪があり、24年には新紙幣が登場。27年には品川−名古屋間でリニア中央新幹線が開通するなど、明るい話題もある。しかし、超高齢化社会に伴う問題が必ず起きてくる。多くの専門家はすでに警鐘を鳴らしているが、自分たちのこととして受け止めている人は少ない。データをもとに、本当に怖いリスクを見ていこう。

 まずは急速な高齢化だ。総人口に対する65歳以上の割合は、19年は28.6%だが、40年には35.3%になる。次のページの上のグラフにあるように、35年には3人に1人が高齢者になる。

 75歳以上の割合も増える。40年には5人に1人が75歳以上の「後期高齢者」になる予測だ。

 高齢化に伴い病気は増える。なかでも大変なのが認知症の急増。九州大学の二宮利治教授(公衆衛生学)の調査によると、15年では高齢者のおよそ6.5人に1人が認知症にあたる。これが40年には5人に1人にまで割合が高まる。患者数は802万人に上り、まさに「国民病」になるのだ。

「肉体的には元気でも脳の老化は起きます。このままでは、道に迷ったり、詐欺にあったりする人が増えると予想されます。高齢者による交通事故も増加するでしょう」(二宮教授)

 高齢化で心身機能が低下し、要介護の手前の状態である「フレイル」になる人もいる。名古屋学芸大学の下方浩史教授(老年医学)によると、14年は高齢者のおよそ10人に1人がフレイル。これが40年には6人に1人まで高まる。特に85歳以上の女性では2人に1人になる。

「再生医療の発達で健康寿命を延ばすことが可能になったとしても、費用が高額になり、多くの人は利用できないかもしれません。人生最後の10年は寝たきりになる可能性も高いので、それを想定した人生を考えるべきです」(下方教授)

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