これからの季節は、熱中症にも注意が必要。運動による発汗量は加齢によって低下するとされ、シニアは体熱を発散しにくいからだ。また、持病で服用している薬によっては、発汗抑制作用があったり、脱水を引き起こしやすい成分が含まれていたりする。

 同協会の高橋まゆみ広報課長はこう話す。

「実際に働く高齢者で熱中症になる人は多くいます。年配の人は我慢強く、家に帰ってから亡くなることもあります」

 シニアの労災の増加の背景には、身体機能の衰えだけでなく、シニアの働き方の変化もある。以前ならば、定年後に働くといっても、現役世代よりも心身の負担が軽い仕事が多かった。それが、今は気力も体力も必要なあらゆる職種でシニアが戦力として働くシーンは珍しくなくなった。

「社会福祉施設などの3次産業で高齢者の労災が増えている」(下村さん)
「最近の警備業は高齢化しています。清掃や食品加工では圧倒的に高齢女性が多くなっています」(高橋さん)

 大阪過労死問題連絡会・事務局長の岩城穣弁護士は、高齢者の就労について指摘する。

「昔なら定年後の人が就くのは、ちょっとした監督などの楽な仕事だった。いまは人手不足もあり、若いときと同じように働かせられる。非常に過酷な労働ではないかという印象がある」

 岩城弁護士は、若い人と同じ過重労働で倒れる高齢者が多いとも指摘し、「弱いものを持っている人が倒れやすい」と話している。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年5月24日号より抜粋