東京都在住の会社員・村上和也さん(仮名・36歳)は16年の12月上旬、夜間に高熱とともに全身の疲労感、吐き気などの症状に襲われた。我慢できないほどのつらさに、日本大学板橋病院の救急外来を受診したという。

「インフルエンザかな」

 と思っていたが、検査の結果、末期腎不全の状態で、すぐにでも透析が必要だと言われた。実は村上さんは中学1年生のとき、学校の尿検査がきっかけでIgA腎症が見つかり、地元の病院で薬物治療を受けていた。11年ごろに尿たんぱくが陰性になり、薬をいったん中止することが決定。しかし、それを機に、通院をやめてしまっていた。

「油断していたんですね。仕事も忙しく、病気のことはほとんど忘れていました。実際、自覚症状もなかったので、病気が悪くなっているとは思いませんでした。ですから透析にも抵抗がかなりあって、主治医、複数の先生からの説得にも1カ月半、いやだとねばりました。何度も話し合い、納得できたうえで導入を決めましたが、今ふり返っても、このときが精神的に一番、つらかったですね」

 営業職であり、日中の外出が多いため、寝ている間に腹膜透析をおこなう自動腹膜透析(APD)を選択。18年1月にカテーテルの手術を受け、APDを開始した。

「思っていたよりも自然に受け入れることができました。在宅透析でも時間が拘束されることはストレスですが、透析をすると体調がよくなることも実感しています」

 主治医である阿部雅紀医師のすすめで村上さんは、19年2月からAPDを最新の装置に変更した。遠隔機能が付いた装置、「ホームPDシステム かぐや」だ。

 これまでの装置と何がどう、違うのだろうか。実はこの装置と主治医がいる病院は24時間、365日、サーバーでつながっているのだ。そして、透析液の種類や透析液の量などは主治医が専用のパソコンから遠隔操作で設定する。

 患者は音声とアニメーションが案内するモニターの表示に従って、ボタンで治療を選択し、指示された番号(バーコード)のついた透析バッグを装置につなぐ。

 設定と違う透析バッグが入るとアラームが鳴り、先の操作に進むことができない。透析を開始するとその状況は医師に自動送信される。阿部医師はかぐやのメリットについて、次のように話す。

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